ピットブルは飼育禁止!?ダン・デイリーの悲劇と特定犬種規制法
条例や法律によって飼育が禁止されている動物は多く存在していますが、それは犬にとっても無関係な話ではなく、特定犬種規制法によって飼育が禁じられた犬種も実在します。
今回は、そんな特定犬種規制法によって飼育が禁じられているピットブルという犬種と、ひょんなことからトラブルに巻き込まれたダン・デイリー氏の悲劇を紹介しましょう。
二人の出会いはドッグレスキュー
アメリカ・ミシガン州のウォーターフォード市に住むダン・デイリー氏は、地元を中心に活躍するミュージシャンとして名の知れた存在でした。
デイリー氏はある日、デトロイトに存在する犬の保護施設であるドッグレスキューへと足を運び、その場にいた一匹の犬に一目惚れ。
すぐに里親になる決心を固めると、手続きを取って自宅へと連れ帰り、その犬にディギーという名前を付けて可愛がり、幸せな時間を過ごしていました。
デイリー氏はほどなくして自身のSNSにディギーとの写真を投稿しますが、その途端、幸せそうな笑顔に溢れる二人の写真に注目が殺到します。
ネット上での評判が高まると、新聞やテレビでも二人の生活が取り上げられるようになり、いつの間にやら全国区の知名度を誇る「人気コンビ」に踊り出ていたのです。
そんなある日、デイリー氏のもとに地元ウォーターフォードから警察官が訪れます。
聞けばこの人物、ネット上でデイリー氏とディギーの写真を見て訪れたらしく、「私も犬が好きなんだ、ぜひ写真を撮らせてくれないか」とせがんできたのです。
地元で有名になりつつあるディギーの写真を撮りに来たのだと判断したデイリー氏は快くこれに応じますが、実は警察官には別のとある目的があったのでした。
ディギーはピットブル?手放すよう求められた衝撃の理由
その数日後、地元警察からデイリー氏の自宅にかかってきた電話の内容は衝撃的なものでした。
なんと、ディギーはこの街で飼育が禁じられているピットブルという犬種であることが判明したため、その日から3日以内に手放すよう求められてしまったのです。
デイリー氏はドッグレスキューから犬種がアメリカン・ブルドッグであるという説明を受けていたこともあり、この要求は到底受け入れられるものではありませんでした。
実は、この数日前にやって来た警察官は、「近所で飼われている犬がピットブルなのではないか」という通報を受けて調査に来ていたのです。
近隣住民の勘違いによってピットブルと判断されてしまっていただけでしたが、事もあろうに警察は写真の情報を頼りに、ディギーがピットブルであると断定。
ピットブルは条例により飼育が禁止されていることに加え、ディギーが獰猛な犬であると決め付け、通告から3日以内というあまりにも短い期間内に処分するよう求めたのでした。
デイリー氏とディギーの反抗…二人を待つ運命は
デイリー氏は、ディギーがピットブルではなく、合法的に飼育が認められているアメリカン・ブルドッグであることを理由にこの要求を拒否します。
ディギーを引き渡したドッグレスキューの所長もディギーがアメリカン・ブルドッグであると表明し、警察の対応は「馬鹿げている」と批判を展開しました。
警察は500ドルという多額の罰金をちらつかせ、手放すよう求めて譲りませんが、デイリー氏もそれに屈することはなく、本業の歌を使った反撃へと出ます。
YouTubeに自身とティギーが遊んでいる様子を背景に歌う動画を投稿し、二人が決して引き離されないほど強い絆で結ばれていることや、ディギーの温和さをアピールしたのです。
この動画はアメリカ全土のみならず、世界中で絶賛されることとなり、やがてディギーがアメリカン・ブルドッグであると実証されると、ようやく飼育が認められるようになりました。
デイリー氏の活動はまだ続いている
こうしてディギーとの平穏な生活を取り戻すことに成功したデイリー氏ですが、彼の活動はこれで終わることはなく、偏見や差別といった問題に対して一石を投じ続けています。
ディギーはその見た目だけで「獰猛なピットブル」と誤解されてしまい、二人の仲が引き裂かれそうになったばかりか、最悪の場合には殺処分という運命に進むことになる危機的状況でした。
このような問題はデイリー氏とディギーだけではなく、世界中のどこでも起こり得る問題であり、そのような悲劇が繰り返されて良いはずがありません。
そもそも、特定犬種規制法で縛られるピットブルも、飼い主に対しては深い愛情を示す優しい性格であると言われており、番犬的な気質を持った犬種でもあります。
きちんとした管理やしつけが行われていれば、ピットブルだとしても、特定犬種に指定されているその他の犬種だとしても、人間との共存は十分に可能なのです。
人間による一方的な決め付けで区別され、差別され、駆逐されているという問題は、デイリー氏と同じように現代人が見直すべき課題の一つなのかもしれません。
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